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黒船屋の日記のような掃き溜めのような。
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地下鉄の階段を上りきると、蝉時雨の洪水がどっと押し寄せてきた。
鬱蒼と繁る緑陰が天を覆い隠す。日暮れの近い都会の真ん中で肌に感じるのは、生温い熱気ではなく、背筋を伸ばさずにはいられない圧迫感だった。
初めてこの界隈を歩いたときのことがまざまざと甦る。やはり夏の暑い黄昏どきだった。東京の中心に位置するのに、なんでこんなに緑が多いんだろうと不思議に思った。それ以上に胸に迫ったのは、えもいわれぬ威圧感だ。ここだけ空気が違う、世界が違う。何か厳粛で大きなものに護られている。言葉にしては不可ないような気配に息苦しくなり、畏れをなしたわたしはただ黙々と歩くしかなかった。

武道館周辺を、日本有数の右翼地帯だと何処かのコラムで称しているのを見かけた。靖国神社に昭和館、九段会館は二・二六事件の際戒厳司令部が置かれた軍人会館を引き継いだものだし、旧陸軍の親睦事業を行った偕行社もこの近辺にあった。実際はどうなのかは分からないが、事情を知らなかったかつてのわたしですら、なにか特別な気配を感じたのにはそうした背景が滲み出していたからかもしれない。
前日には戦没者遺族や政府の要人、報道者らが押しかけたであろうこの界隈も、今日はまた別の賑わいを見せている。九段下の地下鉄駅からひっきりなしに武道館へ向かう人の波は、楽しげな面持ちの若い女性が殆どだった。
友人から『GO×3!フェス』(=ガンダム00とコードギアスの共同イベント)のチケットを頂いて、初めて武道館というものに行ってきた。其処で未だに東京の地理に明るくないわたしを迎えたのは、暑い夏の日に歩いた緑豊かな坂道と、鳴り止まぬ蝉時雨だった。
かつて見たその光景が今もなお鮮明に焼きついているのは、ひとえにその土地の持つ独特の気配に強く惹きつけられていたからだろう。何の変哲もない、当初の目的とはまるで関係のない、けれども消えることのない記憶。今振り返ってみればあの時感じた『何か』が、わたしの心象風景として心に深く根を下ろしているのだと思わざるをえない。





終戦記念日の翌日にこのイベントが武道館で開催される、と云う巡り合わせに奇妙な縁を感じる。00もギアスも、物語の根幹に『戦争』というテーマが横たわっている作品だ。わたしたちはそれを娯楽として、毎週毎週飽きもせずに享受している。
終戦から63年を迎え、戦争から断絶した日々を送る我らは、云い方に語弊があるだろうが娯楽のなかに組み込まれた争いに『戦争』を感じとるしか出来ないのだろうな。会場前に設置されたグッツ販売スペースに群がる人々を横目に、柄にもなくそう考えてしまった。そんなん、わたしごときが偉そうに云えることではないけれど。


それが正しいか否かなんて是非するつもりなどない。誤解を恐れずに云うなら、わたしは両作品が面白ければそれでいい。作品の主題やら争いの描き方にケチをつけるつもりもない。……正直なところ、抽象的に過ぎる00の台詞まわしやギアスのかっこつけたモノローグに辟易しているのも事実だが。それは銀河の彼方に放り出して置くとして。
ただ二つの作品を通して『戦争』を考え、知った気になるのはあまりに傲慢なのではないか。面白いアニメを見て戦争否定して、平和って素晴らしいねと考えるのは軽すぎやしないか、平和ってもっと尊いもんだろなどと毒づきたくなるのです。争いの何たるかを知らない我々が高らかに平和を謳ったって、それ相応の軽さにしかならないと、自嘲ぎみに溜息をつきたくもなるのです。
武道館の天井に掲げられた日の丸が、誇らかに我々を見下ろしています。なんだか恥じ入った気分でその国旗を仰ぎ見ておりました。
けれども、まぁ。それはさておき。
この夏の日に武道館でアリプロの大和ロックが聴けたと云うのも何かの巡りあわせでしょう。アリカ嬢の『今ある平和を大切に』というお言葉を噛み締めつつ、日本有数の右翼地帯を後にする黒船屋なのでした。




……画像は田安門前で撮った軍人会館……ぢゃなかった、九段会館。高二の夏、この界隈がどんな場処なのか知る由もなかったわたしは、このいい具合に古びた威容の建物に胸を躍らせておりました。素敵ー、かっこいいー、此処で結婚式挙げられるのー?すげぇー!!などとはしゃぎながら。無知って恐いわー(笑)
それと、天井の日の丸はギアスの余興に使うんぢゃないかと本気で考えました。合衆国日本。いや、素晴らしい仕掛けだわ!と思いきや単に飾ってあっただけだった……orz


イベントそのものは、OP&EDを担当した方々の演奏と声優さんの朗読で構成されていました。ステージの前にでっかいスクリーンが掲げられ、そこに映像がながれるんだけど、MADを見慣れてる身としては、なんとも新鮮味に欠ける演出でした……なんて野暮なことは云わぬが花か。
しかし一万人……お仲間がこんなにいるのか日本には……と、なにやらこそばゆい思いでしたね。あとこう云うイベントに参加するのは人生初体験なので、驚きの連続でした。ペンライト……買っときゃ良かった(泣)

楽しかったんですけど、贅沢云うならバックホーンも呼んで欲しかったな、なんて……。あの場で『罠』歌ってくださったら、もう歓喜のあまり大絶叫しそう。てか、単にバックホーンを生で聴いてみたかっただけ。
おそらくあの時、彼らはアニメの祭典ではなく、どっかのロックフェスに参加していたのでしょうね……ロックのバンドだもんね(涙) たちうちできるわけがない……か?

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