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黒船屋の日記のような掃き溜めのような。
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少し前の演習の授業中に、先生が「岩井志麻子の『ぼっけえきょうてぇ』について知らないか」という質問をした。
なんでも、今度インタヴューで訊かれるからどんな話なのか情報を得たいとのこと。
志麻子姐さんファンとして、これはなんとしても答えねばと意気込んで語り出したはいいものの、なかなか上手くまとめられず、結局自分の表現力のなさを露呈する羽目になって仕舞った。
『ぼっけえきょうてぇ』を読んだのがかなり前だったからというのもあるが、彼女の作品を未読の方に分かりやすくお勧めするのは難しい。
とても一言では収められないほど深遠なものを描かれているし、ともすれば下品になりがちな世界を取り扱っているからだ。
ちなみにわたしはファンを自称するくせに、彼女の作品は「岡山もの」と呼ばれる、明治から昭和初期にかけての岡山を舞台とする作品しか読んでない。
そのどれもが陰湿で猥雑な空気を帯びている。
にもかかわらずそう云った、女の情念や人間の醜くて卑小な部分をおぞましくも美しく描きあげるのが岩井作品の魅力だ。
彼女の文章には艶がある。特に、物語の核となる女性の描写がうつくしい。女のわたしでもぞくっと来るものがある。
かと思えば、何処か遠くから覚めた眼で物語が進んでいくのを見る瞬間もある。
顔も知らないご先祖様の、色褪せたフィルムがくるくるとまわっていくのを眺めるように、わたしたちは彼女の世界に迷い込む。
わたし個人の中で衝撃的だったのは、やはり岡山を舞台にした短編集『合意情死』だ。作品としては『夜啼きの森』や『黒焦げ美人』のほうが作者らしいが、
本作の中で描かれる小市民な男たちが何処か自分に重なるようで読んでいて怖かった。
ここで云う怖さって、ホラー的なものぢゃない。自分もこの男たちのように愚かで卑怯な人間なのではないかという疑問がわたしにとっての恐怖なのだ。
思うに他の作品もそれに通じてるような気がする。自分ももしかしたら彼らのような狂気を内に秘めているのではないかって云う不安が怖いだ。
もしかしたらわたしだけの意見かもしれないが。


志麻子さんの描き出す世界の狂おしさが好きだ。屹度自分には縁のない世界だからだろう。
わたしもこんな風に、狂気に繋がってしまうほどの想いを味わってみたい。それはおそらく、己を破滅に向かわせて仕舞うだろうけど。
それでも構わない。そんな風に云い切れるだけの強さがわたしにあればいいのに。
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